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14 歳の妹に金融危機発生のメカニズムを説明してみるi

Kevin Nguyen 著

Kevin:
Kevin ニュースとか見てる? 金融危機だなんだって。
Olivia:
Olivia うん。何がどうなってんだかさっぱりだわ。
Kevin:
Kevin ちょっと想像してみてごらん。兄ちゃんがお前に 50 ドル貸してやったとしよう。兄ちゃん
の優しさに免じて、そうだな、貸してやった 50 ドルに 10 ドルの利子をつけて返済するっ
ていう契約にしよう。お前がちゃんと 50 ドル(+利子 10 ドル)を返済する気になるよう
にお前のリザードン(キャラクターの名前)のポケモンカードを担保として兄ちゃんが預
かることにしよう。
Olivia:
Olivia お兄ちゃん、私もうポケモンカードなんかで遊んでないわよ。
Kevin:
Kevin そのことにも触れようと思ってるんだけどちょっと待ってて。そのリザードンは今 50 ドル
のプレミアが付いてる。だからお前が借りたお金を返さないとしてもお兄ちゃんはどう
ってことない。お前がお金を返さない場合、貸したお金と同じ価値のリザードンがお兄
ちゃんのものになるから(何となればカードを売って 50 ドルを手にすることができる)。
Olivia:
Olivia そうね。
Kevin:
Kevin でもある日、みんながポケモンがつまらなくなってカードの価値に疑問を持ち始めたと
する。ただのカードなのになんでこんなに高いんだと。12 歳になって小学校(初等教育)
を卒業すると同時にポケモンからも卒業するからそういうことになる(=50 ドルというリ
ザードンの価値に疑いがもたれることになる)んだろう。それで今やリザードンは 25 ド
ルの価値しかなくなったとする。
Olivia:
Olivia うん。
Kevin:
Kevin リザードンの価値が 25 ドルに下がったちょうどそのタイミングで兄ちゃんから借りたお
金の返済期日がやってきた。でもお前は 60 ドル(利子含む)返せそうにない。そんな時
どうする? どうにかして必死になって 60 ドル返そうとする? それともお金返そうなん
て考えずに今や 25 ドルの価値しかないリザードンをお兄ちゃんにくれてやる?
Olivia:
Olivia 私なら必死こいて 60 ドル返そうなんてしないでリザードンをお兄ちゃんにあげちゃうで
しょうね。
Kevin:
Kevin やっぱりね。カード渡してめでたしめでたし、って考えない奴なんていると思うかい?
今や銀行―兄ちゃんのことだけど―は 10 ドルの儲け(利子)を期待してお金を貸した
のに 25 ドルの損を抱えることになった(貸した 50 ドルが 25 ドルのリザードンとして手
元に戻ってきたので、25 ドル(=25-50)を失った)。この話からわかる教訓ってなんだ
ろう?
Olivia:
Olivia ポケモンはダメダメだ。
Kevin:
Kevin そうなんだろうけど、もうちょっと頑張って考えてみようか。
Olivia:
Olivia ポケモンカードはそのうち価値が下がることがあるかもしれないってこと?
Kevin:
Kevin おお、いい感じになってきた。ポケモンカードにいつまでも高いプレミアムがつき続ける
保証はないってことだね。それもこの話の重要な教訓の一つだ。
Olivia:
Olivia 私にお金を貸すべきじゃないってこと?
Kevin:
Kevin キタ! そのとお~り。お前は 14 歳でまだお金を稼ぐことができるような状況にない。
お前が給料(そもそも給料なんて稼いでいない)から借りたお金を返すことができない
とわかってるのに何で兄ちゃんはお前にお金を貸そうなんて考えたんだろうね?
Olivia:
Olivia 私がお金を返せなくてもその時は 50 ドルのリザードンがお兄ちゃんのものになるから
でしょ。だから私にお金貸したら 10 ドルの儲けを得るか(=妹がちゃんと返済の約束を
守って利子を 10 ドルつけて借りたお金を返した場合)、最悪でもお兄ちゃんが私に貸
した 50 ドル分は担保のリザードンがあるから保証されることになる。みんながポケモン
はダメダメだと考えるようなことがなければ(=リザードンの価値が 25 ドルに下がらず
に 50 ドルのままであれば)、お兄ちゃんが損をすることはない。
Kevin:
Kevin ここでもう一つ想像を働かせてみよう。これまでのように 50 ドルなんてしみったれた金
額じゃなくて何億ドルものお金の貸し借りを考えてみよう。担保はポケモンカードじゃな
くて家だ。アメリカ経済の繁栄は不動産(これまでの話だとポケモンに相当するもの)
の価値が決して下がることはないだろうという思惑の上に成り立っていた。この希望的
観測(=不動産の価値は下がらない)がアメリカに住む何千という人々に共有されて
いるとすると、これまでの兄ちゃんとお前とのお金の貸し借りの話のスケールをでっか
くすることができる。
お前がお金を返すことができなかったんで兄ちゃんも借りてたお金を返せなくなるかも
しれない。さらには兄ちゃんが他の人にお金を貸すこともできなくなるかもしれない。兄
ちゃんたちが住んでるこの国が繁栄するかどうかはお金の貸し借りがどれだけスムー
ズにまわっていくかにかかってるんだ。

i Kevin Nguyen, “ The Financial Crisis, as Explained to My Fourteen-Year-Old



Sister ”(The Bygone Bureau, October 1, 2008)
http://bygonebureau.com/2008/10/01/the-financial-crisis-as-explained-to-my-fourtee
n-year-old-sister/

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