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資料1

世界の食料需給の見通し

平成19年3月
農林水産省
00
目 次

食料需給を見通す上でのポイント 食料需給の見通し
今後の食料需給を見通す上でのポイント・・・・・・・・・・・・・・3 穀物需給の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
地域別の穀物需給の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
需要の見通し 品目別需給の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
世界人口の増加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・‥‥・5 品目別価格の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
所得水準の向上と 水産物の需給の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
畜産物・油脂類・水産物の需要の増加‥・・6
バイオ燃料等原料用農産物の需要の増加‥・・・・・・・・・・・・7 (参考)食料をめぐる世界情勢に関する
最近の新聞・雑誌の報道‥‥‥‥‥23
生産の見通し
収穫面積の増加‥‥‥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
(参考)中国における農地面積の減少・・・・・・・・・・・・・・・・10
単収の向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
高収量品種の導入の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
水資源の制約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
農業労働力の減少・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
地球温暖化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
水産資源の状況・・・・・・・・・・・・‥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

11
食料需給を見通す上でのポイント

22
今後の食料需給を見通す上でのポイント
○ 今後の世界の食料需給を見通すに当たって、需要面でのポイントは、
① 開発途上国を中心に、世界の人口は、どの程度増加するのか。
② 所得水準の向上に伴い、畜産物、油脂類、水産物の需要は、どの程度増加するのか。
③ バイオ燃料等原料用の農産物需要は、どの程度増加するのか。
○ また、生産面でのポイントは、
① 収穫面積は、どの程度増加するのか。
② 伸び率が鈍化してきた単収は、どの程度向上するのか。
③ 水資源の制約、地球温暖化は、農業生産にどのような影響を与えるのか。
④ 水産資源は、増加する需要に応じられるのか。

所得の向上と
世界人口 畜産物、油脂類 単収の向上
収穫面積の増加
の増加 需要の増加(注)

需 要 生 産

バイオ燃料等
所得の向上と 原料用農産物 水資源の制約
水産物需要の増加 水産資源
需要の増加 地球温暖化 の状況
(注):畜産物1kgの生産に必要な穀物量は、牛肉11kg、豚肉7kg、鶏肉4kg、鶏卵3kg(日本における飼養方法を基にしたとうもろこし換算による試算)
また、大豆油1kgの生産に必要な大豆は5kgと試算 33
需要の見通し

44
世界人口の増加
○ 世界の人口は、現在の65億人から2050年には1.4倍の91億人に増加すると見通されている。
○ 先進国は横ばいである一方、開発途上国は1.5倍に増加し、そのうち、中国は1.1倍、インドは1.5倍、アフリカ諸
国は2.1倍となると見通されている。

□ 世界人口の見通し

億人
91億人
100 1.4倍
90
80
65億人 29.2
70
その他(1.5倍)
60
19.3 19.4
50 開発途上国(1.5倍)
アフリカ(2.1倍)
40 9.1
15.9
30 11.0 インド(1.5倍)

20 13.2 中国(1.1倍) 13.9


10 先進国(1.0倍)
12.1 12.4
0
2005 2050
資料:UN「World Population Prospects: The 2004 Revision and World Urbanization Prospects: The 2003 Revision」 :FAO「World agriculture:towards 2030/2050」

55
所得水準の向上と畜産物・油脂類・水産物の需要の増加

○ 畜産物、油脂、水産物の需要は、食文化、宗教、気候・風土、国民の体格等にも左右されるものであるが、一般
的に所得水準の向上に伴って増加する傾向にある。

□ 所得水準と穀物・畜産物・油脂・水産物の需要の推移

中国 インド
kg/人/年 ドル/人 kg/人/年 ドル/人
220 208 3,000 220 3,000

200 200
186
181
180 2,500 180 2,500
158 160 159
155 160 153
160 151
2,000 140 2,000
140 140

120 120
1,500 1,500
100 100

80 80 68
1,000 64 1,000
60 55 60 54
50
39
40 500 40 32 500
26 26 25
15 17
20 9 11 10 8 11 20 10 10
22 5 33 5 6 6 4 4 3 4 5 3 5 7 4 5 5 5 5
0 0 0 0
1970 1980 1990 2000 2003 2015 1970 1980 1990 2000 2003 2015
食用穀物 肉類
乳製品(バター除く) 油脂類
魚介類 1人当たりGDP(右目盛)

資料:需要量はFAO「Food Balance Sheets」、1人当たりGDPはUN Statistics Division、2015年の1人当たりGDPはUN「World Population Prospects: The 2004 Revision and
World Urbanization Prospects: The 2003 Revision」とFAPRI「U.S. and World Agricultural Outlook」を基に試算
66
バイオ燃料等原料用農産物の需要の増加
○ バイオ燃料に対する需要は世界的に高まっており、国際エネルギー機関(IEA)は、2030年には現在の約6倍に
増加すると見通している。
○ アメリカにおけるバイオ燃料用とうもろこしは、2016/17年には現在の3倍弱の1億1千万トン、とうもろこし生産
に占める割合は3割になると見通している。さらに、本年1月のブッシュ大統領の一般教書演説において、2017年
までに、非食料原料を含め、年間350億ガロンの再生燃料・代替燃料使用を目標とすることが発表された。

□ バイオ燃料の需要見通し □ アメリカのとうもろこしの仕向先の見通し

□ ブッシュ大統領の一般教書演説
ブッシュ大統領の一般教書演説
Mtoe
百万トン (2007年1月)
(2007年1月)
400
100 92.4 358
350 2017年までに、非食料原料を含め、
2017年までに、非食料原料を含め、
90
約6倍の伸び
その他 年間350億ガロンの再生燃料・代替燃
年間350億ガロンの再生燃料・代替燃
80 300 283
ブラジル 燃料用 料使用を目標とすることを発表
料使用を目標とすることを発表
70 以外
インド 250
60 248
中国
50 200
仮に、この全てをとうもろこし原料の
仮に、この全てをとうもろこし原料の
40
EU
150 242
バイオエタノールで賄うとすると、約3
バイオエタノールで賄うとすると、約3
30
15.5 億3千万トンのとうもろこし(アメリカの
億3千万トンのとうもろこし(アメリカの
20 100
アメリカ
燃料用 現在のとうもろこし生産量の約1.2倍)
現在のとうもろこし生産量の約1.2倍)
10
50 110 31%
が必要。
が必要。
0 14%
41 (農林水産省試算)
2004 2030 0 (農林水産省試算)
2005/06 2016/17
資料:IEA「World Energy Outlook 2006」 資料:USDA「Agricultural Projections to 2016」
注:図中のMtoeとは、1単位当たり石油100万トンに相当する 注:2016/17年のバイオエタノールの生産量は120
エネルギーを意味する。 億ガロンと予測
77
生産の見通し

88
収穫面積の増加
○ OECD−FAOは、2015年における世界の穀物収穫面積は、2002-04年と比べて6%増加の7.1億ha、油糧種子
は17%増加の1.5億haと見通している。

□ 収穫面積の見通し

穀物 油糧種子
億ha
億ha
先進国 開発途上国 先進国 開発途上国
8 1.6
6.7
7 6.5 1.4 1.3

6 1.2

5 1.0
3.6 4.3
0.7
4 0.8 1.5
7.1
3 0.6
0.4
2 0.4
2.9 0.2 0.6
2.4 0.2
1
0.2
0 0.0
1961-63 2002-04 2015 1961-1963 2002-04 2015

資料:FAO「FAOSTAT」(2004年まで)、OECD-FAO「Agricultural Outlook Data Base」(2015年)


注:穀物は、小麦、米(精米)、粗粒穀物、油糧種子は、大豆、菜種、ひまわり種子を計上している。
99
(参考)中国における農地面積の減少
○ 中国の農地面積は、近年の経済発展に伴う工業化や食料価格低迷による農民の作付意欲の減少などにより、
1996∼2005年の9年間に約800万ha減少した。
○ 特に、かんがい設備が整い、1年間に複数回作付け可能な優良農地が多いとされる中国東南部における減少
が目立っている。

□ 中国の農地面積の推移 □ 中国の農地面積の地域別変化

千ha 1996年
135,000 1億3,000万ha

130,000
2005年
1億2,200万ha
125,000

120,000

115,000

110,000

105,000

100,000
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 中国東南部

(赤部分は2%超減、緑部分は1%超増を表す)
資料:中国農業部「中国農業発展報告」 資料:IIASA「Driving Forces of Arable Land Conversion in China」 10
10
単収の向上
○ OECD-FAOは、2015年における穀物の単収は、2002-04年と比べて13%増加の3.3トン/haと見通している。これ
は年率1.1%の増加に相当し、最近鈍化してきている単収の伸び率はさらに鈍化すると見込まれる。
○ また、2015年における油糧種子の単収は、2002-04年と比べて15%増加の2.3トン/haと見通している。これは年
率1.3%の増加に相当し、穀物同様、単収の伸び率は鈍化すると見込まれる。

□ 単収の見通し
穀物
トン/ha トン/ha 油糧種子
3.5 増加年率
3.5
+1.1%
3.0 3.0
増加年率
2.5 2.5 +1.3%
2.0 2.0
3.3
1.5 2.9 1.5

1.0 2.3
1.0 2.0
1.3
0.5 0.5 1.0

0.0 0.0
1961-63 2002-04 2015 1961-1963 2002-04 2015

資料:FAO「FAOSTAT」(2004年まで)、OECD-FAO「Agricultural Outlook Data Base」(2015年)を基に試算


注:穀物は、小麦、米(精米)、粗粒穀物、油糧種子は、大豆、菜種、ひまわり種子を計上している。
□ 過去の穀物の単収の伸び
1960年代 3.0%(年率) → 1970年代 2.0% → 1980年代以降 1.5%
11
11
高収量品種の導入の可能性
○ 1960∼70年代の「緑の革命」に見られるように、今まで単収の向上に寄与してきたのは、高収量品種の開発と
その普及である。今後においても、高収量品種の開発・普及が単収の向上の一つの鍵となる。


□ 高収量品種の事例
高収量品種の事例


○ ネリカ米
ネリカ米 このような高収量品種の普及により、将
「New
「NewRice
Ricefor
forAfrica」を意味し、アフリカ稲センター(WARDA)
Africa」を意味し、アフリカ稲センター(WARDA) 来見通されている単収の水準(2002∼
で開発された新種米であり、従来品種よりも単収が30%向上
で開発された新種米であり、従来品種よりも単収が30%向上
し、乾燥や病害虫等に強い
し、乾燥や病害虫等に強い 04年から2015年の穀物の単収の増加

年率1.1%)を更に高めることが可能。

○ ハイブリッド小麦
ハイブリッド小麦
国際とうもろこし・小麦改良センター(CIMMYT)が開発した新
国際とうもろこし・小麦改良センター(CIMMYT)が開発した新
種小麦であり、メキシコでは商業栽培よりも単収が15∼20%
種小麦であり、メキシコでは商業栽培よりも単収が15∼20%
向上
向上 (参考)遺伝子組換え作物について

○ 遺伝子組換え作物の栽培面積は、2006年現在、
○ ハイブリッドとうもろこし
ハイブリッドとうもろこし
大豆で57%、とうもろこしで25%のシェアを占める
ガーナ穀物研究所、CIMMYT等がガーナで開発した新種とう
ガーナ穀物研究所、CIMMYT等がガーナで開発した新種とう など普及が進んでいるが、その形質をみると、
もろこしであり、肥料の施用と併せて、現地品種に比べて単
もろこしであり、肥料の施用と併せて、現地品種に比べて単 2006年現在、除草剤耐性が68%、害虫抵抗性が
収が102%向上
収が102%向上 19%、この二つの形質を組み合わせたものが
13%となっており(注)、主に生産コストの低減などを
目的として普及が進んでいるものと考えられる。
資料:CIMMYTホームページ等
資料:CIMMYTホームページ等
(注)国際アグリバイオ事業団(ISAAA)

12
12
水資源の制約
○ 農業の生産性の向上と生産の安定のためには、かんがい面積の拡大と農業用水の確保が重要な要素となる。
○ 世界の穀物収穫面積に占めるかんがい面積の割合は、現在、3割となっており、今後もほぼ同水準で推移する
ものと見通されている。
○ 一方、農業用水の使用量は、2025年には約3割増加すると見通されているが、地下水枯渇等の問題や、効率
的、経済的なダム建設用地が減少しているなどの問題が生じている。

□ かんがい面積の見通し □ 世界の地下水等枯渇状況
水資源の1/3を地下水に依存。北部の乾燥・半乾燥地一帯で地下水層が涸渇しつつある。灌漑耕地の
1995年 2025年 メキシコ 生産力は雨水に依存する天水耕地の3 倍を超えるため、涸渇により灌漑用水が失われた場合の損害
は大きい。
かんがい面積① 213 238(+11%)
広範囲で過剰揚水。巨大なオガララやハイプレーンズといった地下水層(本質的には新たな地下水が補
穀物面積② 687 752(+9%) 給されない化石地下水層。サウスダゴタ南部からネブラスカ・カンザス・コロラド東部・オクラホマ・テキサ
アメリカ
スにまたがる)の過剰揚水は国家的な懸案事項となっている。グレート・プレーン南部の灌漑面積は井
戸涸れ起きた1980年から24%減少。
①/② 31% 32%
大きな化石地下水層を灌漑用の水源として、小麦生産量は1980年の14万トンから92年には410万トンに
資料:IFPRI「World Water and Food to 2025:Dealing with サウジア
急増。だが、その化石地下水層が急速に涸渇した結果、2004年は160万トンに落ち込んだ。灌漑による
Scarcity」 ラビア
小麦生産ができなくなるのは、もはや時間の問題。

地下水層からの過剰揚水は年間推定50億トン。涸渇した場合、現在の収量の1/3 に相当する500万トン
イラン
□ 用途別の水利用の見通し の穀物減産もありうる。

人口2100万。人口増加率、地下水位低下率ともに世界最高水準という特異な状況下にある。世界銀行
イエメン
の報告によれば、国内のほとんどの地域で地下水位が毎年2 メートルあまり下がっている。
1995年 3,572km3 イスラエ 海岸部の地下水層も、パレスチナと共有している山間部の地下水層も涸渇しつつある。深刻な水不足
ル で、小麦作の灌漑が禁止された。 水供給の逼迫状況が続くことで、地域の緊張はさらに高まりそうだ。
うち農業用2,504 生活用354 工業用714
主要な穀倉地帯であるパンジャブ、ハリヤナ両州を含めたほとんどの州で地下水位が低下。年に数千
インド
本の灌漑用井戸が涸れ、毎年1800万人ずつ増える人口を養うのは、次第に難しくなっている。

2025年 4,912km3(+38%) 中国
黄河流域の農工業生産、都市化による水需要の増大により、1970年代以降、下流域∼河口に水が来
ない「断流」が発生。1991∼97年の平均断流日数は102日間。
うち農業用3,162(+26%) 生活用645(+82%) 工業用1,106(+55%)
資料:レスター・ブラウン「フード・セキュリティ だれが世界を養うのか」、国際協力銀行開発金融研究所「中国北部水
資料:I,A.Shiklomanov「Assessment of Water Resources and Water
資源問題の実情と課題」より抜粋。 13
Availability in the World」 13
農業労働力の減少

○ 農業労働力の伸びが鈍化すると見込まれる中で、農業の担い手が十分確保されなければ、農業生産が不安定
となる。特に、農業の近代化が遅れているアフリカでは、農業労働力の確保が重要となるが、エイズによる農業
労働力の大幅な減少などが農業生産を衰退させる要因になると見込まれている。

□ 世界の農業人口の推移と見通し
百万人
3,000
2,621
2,573
2,443 73 先進国
2,500 100
2,219
1,996 159
134
□ ジンバブエのエイズ患者のいる農家の農業
2,000
195
アフリカ
生産の減少(1997年)
1,500 2,048 を除く開
2,031
1,746
1,931 発途上

農畜産物 生産減少
1,000 1,536
アフリカ とうもろこし ▲61%
500

266 314 379 443 499 綿花 ▲47%


0
1970 1980 1990 2000 2010 野菜 ▲49%
資料:FAO「FAOSTAT」
(注)農業人口とは、農業に専ら依存している家の世帯員数である。 落花生 ▲37%
□ エイズによる農業労働力の減少(2020年) 牛 ▲29%
(エイズの影響がない場合=100)

資料:FAO「The impact of AIDS on food security」(2001)
100
89 89 87 87
90 86 86
83
80 80 77 77
80 74
70
60
50
マラウイ
タンザニア

南アフリカ

モザンビーク
ケニア
コートジボアー

ジンバブエ

ボツワナ

ナミビア
カメルーン

中央アフリカ

ウガンダ

資料:FAO「The impact of AIDS on food security」(2001) 14


14
地球温暖化
○ 地球温暖化は、農業生産に対して、CO2の濃度の上昇による収量増加というプラス面がある一方、気温の上昇
や異常気象により、農地面積の減少、生産量の変動、適地の移動などの影響を及ぼすことが懸念されている。

□ 地球温暖化による農業への影響予測

日本 ※4 北アメリカ ※1
・ヨーロッパ北部・ロシア 農業に好影響 ・コシヒカリ栽培に関し、3℃上昇
・ヨーロッパ南部 農業生産性は減少※1 ・カナダの大草原やアメリカの大
した場合、東北南部以西で生産 平原で干ばつにより農作物生産
量が最大10%減少 の減少
・現在の生産地より北の地域で食
アフリカ アジア ※1 料生産の増加
・干ばつ 洪水により、水資源、 ・熱や水ストレス、海面水位の上昇、洪水、干ばつ、熱帯低気圧
食料安全保障へのストレスが による農業生産性と水産養殖の減少により多くの国の食料安
増大 ※1 全保障を低下させる
・天水農業への極度の依存の ・降水強度の増大により、温帯及び熱帯アジアの洪水のリスクが ラテンアメリカ ※1
ため脆弱性が高い ※1 増加 ・重要な農作物生産が減少
・気温が4℃上昇で農業生産が ・温帯・熱帯アジアでは、小麦の赤カビ病やイネのイモチ病など ・洪水や干ばつの頻度が高
15∼35%減少 ※2 の病気が広がる まる
・生育期間が短くなることなど
豪州・ニュージーランド※1 により、ブラジル、アルゼン
バングラデシュ ・一部の温帯農作物への影響 チン、チリなどで、トウモロコ
インド ※1
・1mの海面上昇で、約3万km2の国 は初期には好影響となるが、 シ、小麦、大麦などの生産
・1mの海面上昇で、
土が浸水し、農地が失われたり、 更に気候変化が起きると農 量が減少
約6千km2が浸水し、
農地が失われたり、 塩類化が起こる。※1 作物に悪影響
塩類化が起こる ・また、 1mの海面上昇で年間80万 ・干ばつの頻度が高まる 資料:
・深刻な水不足によ トンから290万トンのコメ生産が失 ・気温が4℃上昇で一部地域 ※1 IPCC3次評価報告書WG2
り、小麦やコメの生 われる※3 で生産活動が不可能 ※2 スターンレビュー(2006)
※2 ※3 アジア開発銀行
産性が悪化 ※4 (独)農業環境技術研究所
注 IPCC4次評価報告書WG2の公表は4月上旬予定

15
15
水産資源の状況
○ 水産資源については、国際的な管理の取組が行われている。
○ FAOによれば、乱獲などにより8割近くが満限利用・過剰漁獲の状況にあり、今後、漁獲漁業については生産
量が停滞することから、今後の需要量の増加は、養殖業による生産量の増加に頼らざるを得ない状況にあると
見込まれている。

□ 水産資源の利用状況(2004年) □ 水産資源の管理の状況

過剰漁獲・枯渇・ 適度な利用・低・ マグロ類は回遊水域が広範囲であるため、国連海洋法条約を


満限に利用
枯渇から回復途 未利用
52%
上 25% 23% 踏まえ、水産資源の保存及び持続的利用を目的とする5つの地
域漁業管理機関(RFMO)において資源管理が行われている。

0% 20% 40% 60% 80% 100% これらのRFMOにおいては、総漁獲可能量の設定を含む科学


資料:FAO「Review of the state of world marine fishery resources」 的な資源の評価・管理、IUU(違法・無報告・無規制)漁業への

□ 世界の漁業・養殖業の生産量の推移 対策を推進。
万トン
16,000

14,000

12,000 養
国際連合は、タラ、カレイ等のストラドリング魚類資源及びマグ


10,000
ロ、カツオ類等の高度回遊性魚類資源の保存と持続的利用を確
8,000

6,000 漁
保するために遵守すべき一般原則等について定めた「国連公海


4,000 業
漁業協定」を採択。(本協定の発効は2001年12月)
2,000

0
現在我が国も含めて60カ国弱が締約。
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000
資料:FAO「Fishstat(Capture production 1950-2004)(Aquaculture
production 1950-2004)」を基に作成 16
16
食料需給の見通し

17
17
穀物需給の見通し
○ 今後の穀物需給について、各種機関によって様々な予測が行われているが、どの見通しにおいても需要量・生
産量が大幅に増加すると見通している。

□ 穀物の需給見通し

百万トン 需要量 生産量


4,500 1.5倍

4,000
1.3倍
3,500
3,010 3,012
3,000 1.1倍
2,677 2,680
2,500 2,320 2,326
2,044 1,986
2,000

1,500

1,000

500

0
現状(2006年) OECD-FAO(2015/16年) FAO(2030年) FAO(2050年)

資料:OECD-FAO「Agricultural Outlook 2006-2015」、FAO「World agriculture: towards 2030/2050」


現状(2006年)はUSDA「Grain: World Markets and Trade」

18
18
地域別の穀物需給の見通し
○ FAOは、人口が増加するアジアやアフリカにおいて、穀物の需要量の増加に国内生産量の増加が追いつかず、
その不足分をアメリカをはじめとする先進工業国の輸出によって賄うと見通している。

□ 地域別の穀物需給の見通し

上段:2050年
(市場経済移行国) (先進工業国)
下段:1999/01年
生産量
生産量

需要量 需要量

(百万トン) (百万トン)
0 500 1000 0 500 1000
(東アジア)

生産量
(南アジア)
(近東・北アフリカ)
生産量 生産量 需要量

(百万トン)
0 500 1000
需要量 需要量

(ラテンアメリカ・カリブ海)
(百万トン)
(百万トン)
0 500 1000 0 500 1000
生産量
(サハラ以南アフリカ)
生産量
需要量

(百万トン)
需要量 0 500 1000

(百万トン)
0 500 1000

資料:FAO「World agriculture: towards 2030/2050」を基に作成 19


19
品目別需給の見通し
○ FAOは、2050年の需要量・生産量について、
・ 小麦については、人口の増加により、5割程度増加
・ 粗粒穀物(とうもろこし等)については、人口の増加に加え、飼料用需要やバイオ燃料用需要の増加により、6
割程度増加
・ 米については、人口の増加により、3割程度増加
すると見通している。

□ 品目別需給の見通し (単位:百万トン)

小麦 粗粒穀物 米 油糧種子

需要量 生産量 需要量 生産量 需要量 生産量 需要量 生産量

現状(2006年) 619 592 1,009 967 416 415 302 292

696 698 1,134 1,138 490 490 372 363


OECD-FAO
(2015/16年)
(112) (118) (112) (118) (118) (118) (123) (124)

813 818 1,360 1,356 503 505


FAO
― ―
(2030年)
(131) (138) (135) (140) (121) (122)

903 908 1,584 1,580 522 524


FAO
― ―
(2050年)
(146) (153) (157) (163) (125) (126)

資料:OECD-FAO「Agricultural Outlook 2006-2015」、FAO「World agriculture: towards 2030/2050」


現状(2006年)はUSDA「Grain: World Markets and Trade」、 OECD-FAO「Agricultural Outlook Data Base」を基に作成
備考( )内は、現状値を100とした指数 20
20
品目別価格の見通し

○ 現在、穀物や大豆などの農産物価格は強含みとなっているが、今後も、現状の水準、あるいはそれ以上の水
準で推移するものと見通されている。

□ OECD−FAOにおける農産物価格の見通し □ USDAにおける農産物価格の見通し
ドル/トン ドル/トン
予測値 予測値
350 350
米 314
300 300
油糧種子 272 大豆
253 248
250 250
211 217

200 215 200
小麦 小麦 167
155 162
150 142 150 130
113 とうもろこし
100 125
100 とうもろこし 100

81
50 50
2004/05

2005/06

2006/07

2007/08

2008/09

2009/2010

2010/11

2011/12

2012/13

2013/14

2014/15

2015/16

2016/17
2000-2004

2005/06

2006/07

2007/08

2008/09

2009/2010

2010/11

2011/12

2012/13

2013/14

2014/15

2015/16

資料:OECD-FAO「Agricultural Outlook 2006-2015」(2006年)、USDA「Agricultural Projections to 2016」(2007年2月)


備考:OECD-FAOの価格: 米はMilled,100%,grade b, Nominal Price Quote, NPQ. f.o.b. Bangkok(August/July)、油糧種子はWeighted average oilseed price, European port、
小麦はNo.2 hard red winter wheat, ordinary protein, USA f.o.b. Gulf Ports (June/May)、とうもろこしはNo.2 yellow corn, US f.o.b. Gulf Ports (September/August) 。
USDAの価格: 米はAverage market price、大豆、小麦、とうもろこしはfarm price。
注:USDAについては、小麦は1トン=0.027216ブッシェル、とうもろこしは1トン=0.025401ブッシェル、大豆は1トン=0.027216ブッシェル、米は1トン=0.045359cwtで換算。 21
21
水産物の需給の見通し
○ FAOは、2015年における魚介類の需要量は、現在の1.4倍になる一方、生産量については、養殖業が増加する
ものの、漁業が資源管理の観点から停滞すると見込まれることから、1.3倍にとどまると見通している。
○ 2015年には、生産量が需要量に比べて1千万トン少ないことから、価格が上昇するとともに、魚介類から他のた
んぱく源に移行すると見通している。

□ 魚介類の需要量の見通し

百万トン
200
需要量
11百万トン
生産量 1.4倍
150

1.3倍
100
183 172
133 129

50

0
1999/2001 2015
資料:FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture 2004」 22
22
(参考)食料をめぐる世界情勢に関する最近の新聞・雑誌の報道
○ 最近、世界の食料をめぐる状況に変化の兆しが見られる中、新聞や雑誌においても食料問題についてとりあげ
られるようになってきている。

【食料需給の構造変化】 【バイオエネルギー需要の増大】
・ (穀物価格の)値上がりが収束しないのは、世界の穀物需 ・ 米国内のガソリン消費量を今後10年間で20%削減する方針
給が構造変化を来したからだ。従来は飼料や輸出に回され を打ち出し、バイオ燃料の活用がさらに広がるとの観測も穀
ていたトウモロコシが、エタノール生産に向け大量に使われ 物価格の上昇相場を下支えしている。(2007.1.28道新)
るようになった。一方で、経済成長が著しい中国やインドな ・ (アメリカ)農務省はエタノールの利用促進で今後もトウモロ
どが、各種穀物の輸入を増やしている。 (2007.2.20読売) コシ価格が高値圏で推移すると予想している。(2007.3.6日
・ 需要増の一方で、漁獲量規制によって供給量は減る。資 経)
源保護の高まりで価格が上昇する。マグロはその象徴だ。 ・ 菜種急騰の背景にあるのは、トウモロコシと同じ構図だ。
世界的に買い付け競争が厳しいのはマグロだけではない。 ディーゼル車の普及している欧州連合(EU)加盟国内では、
(2006.12.23日経) 菜種や大豆を原料とする軽油代替のバイオディーゼルの生
産が増えているのだ。(2007.2.10朝日)

【中国、インドなどの経済発展】
・ 中国でもここ30年で肉類消費が6倍に。牛肉消費は16倍
以上に伸びている。経済成長を続けるインドの消費動向も
目が離せない。(2007.1.5東京)
・ 経済発展著しい中国が、異常なスピードでマグロの消費
量を増加させている事実は、意外と知られていない。
(2007.3.8週刊文春)

(注)農林水産省の責任で、表現について一部省略などを行っております。 23
23

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